第10回関学英米文学月例会 発表要旨
【発表題目】シンメトリーの欲望—『武器よさらば』におけるキャサリンとフレデリックの対応関係—
【発表者】勝井 慧
【発表要旨】
本発表では、これまで相違点や優劣について注目されることの多かったFrederic とCatherineの類似点に注目し、HemingwayのA Farewell to Arms(『武器よさらば』)におけるシンメトリーの構造について考察しました。
FredericとCatherineはどちらも戦争によってこうむった身体的、精神的苦痛から逃れるため、互いに相手を利用し、戦争と死の恐怖から逃避しようとしたという点で、二人の行動は相似形をなしていると言えます。
さらに、イタリア軍に所属するものの戦闘員ではなく救急車の運転手であるアメリカ人のFredericと、イタリアにあるイギリス軍の病院においてVAD(Voluntary Aid Detachment)として看護士の補佐を務めるスコットランド人のCatherineは、どちらも民族的、職業的に孤立した立場にあるという点でも対応関係にあると言えます。
また、肉体や肉欲と深く結びつき、信仰への不信感を持つ親友のRinaldiとFredericはさまざまな点で類似しており、分身関係にあると言えますが、一方で、もう一人の友人である神父が体現する精神性や信仰を、郷愁という形で希求していると考えられます。Catherineもまた肉体や肉欲、不道徳の象徴である娼婦と関連付けられる一方、精神性や信仰、道徳と結びつく聖母の側面を持つ者として描かれます。すなわち信仰や道徳、社会規範において相反する二つの要素を持ち、拮抗状態にあるという点でも、FredericとCatherineはシンメトリーを成していると言えます。
このようなFredericとCatherineの持つさまざまな類似点とそのシンメトリーの構図は、Catherineが望んだ二人の一体化へとつながり、同時に二人のジェンダーのゆらぎと密接に結びついていると考えられます。この点において、『武器よさらば』に描かれたFrederic とCatherineの対応関係は、Hemingwayの最後の作品であるThe Garden of Eden(『エデンの園』)においてより明確に描かれることとなる、男女の性役割の交換への序章となっていると言えます。
【発表題目】サンクリュアリ:テンプル・ドレイクの意志
【発表者】 山下紗夏
【発表要旨】
【発表題目】停滞と移行のモチーフ—The Reefにおける建築とインテリアの機能
【発表者】 水口陽子
【発表要旨】
Edith Whartonの小説The Reefの中で、建築とインテリア(扉、絵画、彫刻など)が織り成す室内空間が作品のテーマといかに関わり合っているかを、主な登場人物の視点を通して描かれるテキストの詳細な分析によって行う。George Darrowの女性に対する意識は、絵画や彫刻の崇高なイメージの中に対象を「閉じ込める」行為を行っていると言えるが、Mr. Leathが行う蒐集や、人間をある種の蒐集物として閉じ込めている建物や家族ともつながっているだろう。こうした停滞した空間や人間関係に変化をもたらす場として、ドアが物語の移行の契機となっている点に注目し、作品を読み解く。